初めてのデート
彼との待ち合わせは駅の改札横だった。
懐かしい背の高い男性が緊張した面持ちで立っていた。
朝早くから私の地元に来てくれたことが何より嬉しかった。が、とても恥ずかしい気持ちになった。
時間が約束の時になって、彼の元へ走った。
彼に近づき、名前を呼ぶと私に気づいてくれた。
それから喫茶店へ行き、近況報告的な話をした。彼は退院後も自宅に帰る事を許されず
デイ・ケアなどの福祉サービスを利用していることを教えてくれた。
以前はアルバイトの経験があることや、社会人として働きたいと言った。
私は精神障害を持っていても、一人暮らしで自由に暮らしているのが羨ましいと言われた時、少し悲しかった。
彼には病院や両親が決めた方針で生きていかなければならないことや私は医療保護という
本人が望まなくても家族によって入院させられたとの事から入院の同意書にサインした娘とは関係に亀裂が入った。
その娘は遠い実家に身を寄せていた。
そんなそれぞれの立場が悲しかった。
そして…私を羨ましいという彼を私でしてあげれる事はないかな?と思った。
あっという間に夕方になって、帰らないといけないと彼は言った。
住んでいるところはグループホームではないが、帰宅が遅くなるとうるさいからと。
寂しかったが、帰宅したら電話するからね と私を抱きしめてくれた。
駅の改札まで一緒に行き、別れた。何度も繰り返し手を振ってくれた。
私は完全に彼に対して恋に落ちてしまった。
夜、またいつもの様に電話をくれた。彼は
会えて嬉しかったし、これからも会って欲しいなと言ったので、私も久しぶりに元気そうで良かった、うん!また会おうねと答えた。
少し気を使ってしまったせいか、早めに服薬を済ませ休んだ。
初めてのデートは華美なものではなかったが
私の脳裏に今でも焼き付いている。
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